コラム 生駒屋敷

熟女好きにされた織田信長

 また、「武功夜話」ネタになってしまうが、ここを整理しなければ、歴史の考察へと先に進めない。もちろん、先に進めないのは、私だけではなく、多くの研究者や歴史ファン、或は、日本国民と言っても言い過ぎではない。

 さて、熟女好きにされた織田信長とはどういうことか。それは、久菴(武功夜話では吉乃)の年齢である。

 この「武功夜話」による年齢詐称事件は、「武功夜話」の話が史実と捉えられ、信長研究の大切なところが抜け落ちてしまっている様に感じる部分でもある。

 「武功夜話」では、当初、久菴(吉乃)は39歳で亡くなったとされた。「武功夜話」を史実として受け止めた方の多くは、その様に信じ、また、物書きの方も39歳で亡くなった
と書かれた方も多い。大変、お茶目な話だが、吉田家の登場人物の都合で、2000年代に入った頃か、「武功夜話」で久菴(吉乃)を説明する際は、29歳に変更されたのである。
この変更により、武功夜話に頼る方の中には、現在、29歳死亡説と39歳死亡説が混在している。

 実際はどうか。生まれた年がわからないため、正確にはわからないが、兄弟、姉妹の関係から推測すると、25、26歳辺りであろう。熟女好きが悪いとは言わないが、信長は、一般的な感覚の男性だったと考えて良いのではないか。

 また、この久菴の亡くなった年齢に関連して語られるのが、「産後の肥立ちが悪く・・・」と、3人目の子、徳姫を産んですぐに亡くなったという話であるが、例えばウィキペディアや、その他年表で、どなたでも確認ができるが、徳姫が生まれて7年後に亡くなっている。長男の信忠が10歳の時である。生駒家の記録に、産後の肥立ちが悪く早死にしたとの記録は一切ない。全て、「武功夜話」の設定上の話で、7年間も生きてもらっては困ったのだろう。熟女にして、子供を産んで早々に死なせてしまった。
 
 しかし現実は、3人目の子を産んで、7年間生きている。そこにはどの様な生活があったのか、ドラマがあったのか。事実は、とても興味深く想像力を掻き立てる。

                           

生駒 英夫